八八艦隊構想〜ワシントン海軍軍縮条約

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八八艦隊と其の計画艦日露戦争から八八艦隊構想第一次大戦の影響ワシントン軍縮条約




そも八八艦隊とは如何なる物であるか(大正14年第1版・昭和6年第82版『廣辭林』より)
八八艦隊 超弩級戦艦八隻と巡洋戦艦(重巡洋艦)八隻とを主力として編成する一艦隊。

一艦隊
超弩級戦艦
(例:長門型)
巡洋戦艦
(例:金剛型)






主な計画艦
艦型名計画艦名
計画数
主な艦影整備状況
長門級戦艦長門、陸奥

長門級
両艦とも完成
加賀級戦艦加賀、土佐


加賀級
加賀のみ空母に改装し完成

紀伊級戦艦紀伊、尾張、
11号艦(近江)、
12号艦(駿河)


紀伊級
未完成
天城級巡洋戦艦天城、赤城、
高雄、愛宕


天城
赤城のみ空母に改装し完成

13号艦級巡洋戦艦13号艦、14号艦、
15号艦、16号艦


13号艦
未完成
翔鶴級航空母艦2隻
未完成
天龍級軽巡洋艦6隻


天龍
完成
古鷹級大型巡洋艦3隻


古鷹
完成
峯風級、若竹級
其の他駆逐艦


峰風



若竹
完成



日露戦争以後の状況と八八艦隊思想の道筋 日露戦役直後から『主力艦整備計画』として提案されていた本計画は、 財政上の問題や、当面の脅威がなくなった事などから延期され続けていた。 然し其の後、日露戦役により帝政露西亜海軍は壊滅したが、 彼の国に成り代わりて帝国海軍の前に立ちはだかったのは独逸、亜米利加の艦隊であった。 独逸皇帝ヴィルヘルム2世は、19世紀末より急激なる海軍力の増強を行い、 中国の青島や、南洋諸島のマーシャル、マリアナ、カロリンの独逸領に太平洋艦隊を配備し、 しばしばわが国を敵視する言を吐いた。 又、アラスカ(アリューシャン列島含む)、ハワイ、フィリッピン、 ガムを手に入れて我国に近づいた亜米利加は、海軍力の急速な増強を行った。 其の一環として、戦艦16隻から成る『ホワイトフリート(白い艦隊)』に 世界一周をさせ武威を示し、其の途中横浜港に来航した(1908)。 このような状況下、海軍首脳部には、 『独逸、亜米利加両海軍の内、優勢なほうの7割以上の海軍力を整備して国防に当たる』 との方針が成立した。 これは、 『進行艦隊は邀撃艦隊に対し、5割以上の兵力を必要とする』 との論理から、考え出されたもので、 独、米のいずれかの艦隊が我国に遠征してきても、 7割以上の兵力で邀撃すれば、兵力差は約3割となり、 5割以上の兵力優勢という事態を阻止し敗退を免れる事が出来ると言う物である。 この考え方から、海軍では戦艦8・装甲巡洋艦8(大正時代になり巡洋戦艦に)の整備、 即ち『八八艦隊』の整備を目標とするようになった。 追加条件として艦齢8年以内というものがあり、『八八八艦隊』と言う場合も(少ないが)ある。 そして大正3年に超弩級戦艦『長門』建造を中心とする『八四艦隊計画案』、 大正7年に『八六艦隊計画』として承認、拡充されていき、 大正9年、ついに『八八艦隊予算案』が成立するも、 其の後の大正11年のワシントン海軍軍縮条約で水泡に帰した。 同計画に対しては、 『莫大な財政負担であり中止にならなければ国が滅んでいた。』 との見方が多数派である。


第一次世界大戦の与えた影響 大英帝国と独逸の海戦戦訓から戦艦の戦闘力を再確認したわが海軍は、 より一層の『大艦巨砲主義』を極めんとした。 特にフォークランド沖海戦や、ユトラ沖海戦(北海)で、 英独の巡洋戦艦部隊が活躍した状況を見て巡洋戦艦の価値を一層重視した。 当時わが海軍は、金剛型巡洋(高速)戦艦4隻を保有していた。 (英国製の『金剛』、国産の『比叡』、『榛名』、『霧島』を保有。) 又、空前絶後の大海戦であったドッガー・バンク海戦、ジュットランド沖海戦などから、 建造中あるいは就役直後の扶桑級、伊勢級ともに防御力や構造に問題があり、 戦力としては不十分であるとの戦訓を得た海軍首脳部は、八八艦隊計画の早急な実現を目指すことになった。 さらに、新たに登場した航空機、潜水艦の効果的な艦隊支援案を模索し、 後の潜水艦による敵艦隊残減作戦、艦載水上機による策敵作戦などを完成させた。 特に、艦載水上機(少数の艦載飛行艇)は軽巡洋艦にまで配備され、 まさしく艦隊の目となり(偵察)、時に手となりて(爆撃など)行動した。 更にこれ等の発想は潜水艦にも水上機を搭載するという発想へつながっていった。 其の外に、独逸からの戦利潜水艦7隻によって、我国の潜水艦技術が飛躍的に発展した。 戦利潜水艦06号(UB125号)



ワシントン海軍軍縮条約要点(軍艦について)
1.各条約締結国の主力艦合計トン数
大日本帝國      315,000トン(320,040「メートル式」トン)
亜米利加合衆国    525,000トン(533,400「メートル式」トン)
大不列顛愛蘭連合王国                                         
(大英帝国)      525,000トン(533,400「メートル式」トン)
佛蘭西国       175,000トン(177,800「メートル式」トン)
伊太利国       175,000トン(177,800「メートル式」トン)

此れが所謂5:5:3(米:英:日)の比率である。


2.新造艦について
基準排水量35,000トン(35,560「メートル式」トン)以上の主力艦の
取得、建造、法域内での建造許可発行を禁止する。

亦、主力艦の主砲口径は40.6cmを超えることを禁止する。


3.航空母艦について
各国の航空母艦合計トン数(基準排水量)
大日本帝國       81,000トン( 82,296「メートル式」トン)
亜米利加合衆国    135,000トン(137,160「メートル式」トン)
大不列顛愛蘭連合王国                                         
(大英帝国)      135,000トン(137,160「メートル式」トン)
佛蘭西国        60,000トン( 60,960「メートル式」トン)
伊太利国        60,000トン( 60,960「メートル式」トン)

航空母艦の代換は1921年11月12日以前に保有、建造中のものは、
試験艦として扱い、艦齢に関わらず保有トン数内で代換可能とする。

基準排水量27,000トン(27,432「メートル式」トン)以上の航空母艦の
取得、建造、法域内での建造許可発行を禁止する。

但し、各国割当トン数を超えない限り、基準排水量33,000トン
(33,528「メートル式」トン)を超えざる航空母艦2隻まで建造することができる。
上記には、廃棄すべき、若しくは建造中の主力艦中の2隻を利用することができる。

基準排水量27,000トンを越える航空母艦の備砲中に15.2cm以上の口径の物があるときは、
航空機防御砲の口径12.7cm以下の砲を除く、其の他の備砲は8門までとする。

上記以下の空母も、20.3cm以上の砲を装備することを禁止し、
備砲中に15.2cm以上の口径の物があるときは、
航空機防御砲の口径12.7cm以下の砲を除く、其の他の備砲は10門までとする。
但し、15.2cm以上の砲がない時は、備砲の装備数制限はなしとする。

4.其の他軍艦
主力艦亦は、航空母艦以外の全ての軍艦は、
基準排水量10,000トン(10,160「メートル式」トン)以上の艦の
取得、建造、法域内での建造許可発行を禁止する。

本条約は、平時民間、政府用艦船として使用していても、
戦時には軍用艦に重用する予定のある艦全てに適用されるものとする。

将来起工するこれら其の他の軍艦は20.3cm以上の砲の装備を禁止する。


5.廃棄主力艦の利用
航空母艦に転用が認められた主力艦以外は、再び軍艦としての使用する事を禁止する。


6.商船の軍艦改装準備
軍艦に改装することを目的として、平時より武装準備を施すことを禁止する。
但し、15.2cm以内のほうを装備するための甲板の補強は可能とする。


7.非締約国軍艦
締約国が非締約国のために建造する同型の軍艦は、
条約の規定内の性能で作らなければならない。
非締約国のために建造する航空母艦は如何なる場合にも、
基準排水量27,000トン(27,432「メートル式」トン)を超えてはならない。

非締約国のために軍艦を建造する締約国は、他の締約国に対して、
契約締結日、竜骨据付日、規定されたる細目を通知せねばならない。

戦争に従事する時、法域内の他国のために建造中の軍艦、
または建造後引渡し前の状態にある艦を自国の軍艦として使用してはならない。





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